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フィラリア注射とは何か – 費用やリスクについて予防薬と比較

フィラリア予防では予防薬を使用するのが一般的ですが、注射による予防法もあります。

1回の接種で1年間予防効果が持続するため、予防薬のように定期的な犬への投薬が不要となります。

この記事では、フィラリア注射とはどんな予防法なのか、費用、リスクについて紹介します。

猫は注射によるフィラリア予防ができないので、予防薬を使用しましょう。

フィラリア注射とはなにか

フィラリア注射は、体内に侵入するフィラリアを駆除し、フィラリア症の感染を防ぎます。

フィラリア注射のメリットとデメリットをまとめています。

メリット
  • 1回の接種で通年予防が可能
  • 通年予防のコストが下がる
  • 動物病院の混雑を避けられる

1回の接種で1年間効果が持続するので通年予防が可能です。予防薬のように毎月投薬する必要がなくなります。

コスト面においても予防薬より注射だと費用が抑えられます。

また、フィラリア注射は接種期間に決まりがないため病院の混雑を避けることができます。フィラリア検査や狂犬病予防接種で特に混雑しやすい春の通院を避けられます。

デメリット
  • 副反応や死亡のリスクがある
  • 犬によっては接種できない
  • フィラリア予防のみで、ほかの寄生虫は駆除できない

フィラリア注射のデメリットとしては、予防薬よりも副反応や死亡のリスクが高いことです。

副反応の危険性がはっきりとしていないため、子犬、老犬、妊娠中の犬は注射を受けることができません。

通年でフィラリア予防はできますが、ノミやダニなどのほかの寄生虫を一緒に対策することはできないため、別途対策が必要です。

注射予防がおすすめのケース

フィラリア注射がおすすめなケースは以下の通りです。

・予防薬に抵抗をもつ犬を飼っている方

予防薬に対して抵抗があったり、投薬後すぐに吐き出してしまう犬には、フィラリア注射はおすすめです。お薬が苦手な犬に無理に投薬したり、投薬後吐き出さないかチェックする飼い主への負担も軽減できます。

・毎月の予防薬の投薬を忘れてしまいそうな方

毎月の予防薬の投薬を忘れてしまいそうな方も、注射でフィラリア予防をすべきです。1回注射をすれば投薬日を管理する必要はなくなり、あげ忘れのリスクを避けられます。

・忙しくて動物病院に通院する時間がない方

予防薬の場合、投薬を忘れるとフィラリア検査を受けに動物病院にいかないといけないケースもあります。フィラリア注射であれば、次回の接種まで通院する必要はありません。

注射予防をしてはいけないケース

すべての犬がフィラリア注射の接種ができるわけではありません。下記の犬の場合は、フィラリア注射の接種は避けるべきです。

  • 1歳未満の子犬
  • 老犬(12歳以上の小型犬、8歳以上の大型犬)
  • 妊娠中の犬
  • 重い持病を持っている犬
  • 注射でアレルギー反応を起こした経験がある犬

また、フィラリア以外の寄生虫も同時に駆除したいという飼い主も、フィラリア注射は適していません。
フィラリア注射は、体内に侵入したフィラリアのみを駆除するものであり、ノミダニなどのほかの寄生虫を対策することはできません。

ほかの寄生虫もまるごと駆除する場合、オールインワンタイプの予防薬がおすすめです。

フィラリア予防注射の種類と費用

動物病院で主に使用されているフィラリア注射は「プロハート」です。

フィラリア注射は、犬のサイズや体重によって費用が異なります。また、動物病院によっても注射の費用は変わってきます。

以下は、ある動物病院のフィラリア注射の費用で、平均的な金額になっています。

犬の体重費用
〜5kg未満¥7,067
5kg〜10kg¥8,967
10kg~15kg¥10,867
15kg~20kg¥12,767
20kg~25kg¥14,667
25kg~30kg¥16,567
30kg~35kg¥18,467

参考:
以下の動物病院平均金額
マディー動物病院 桶川医院、海動物病院、マエカワ動物病院

フィラリア注射の時期

フィラリア注射の接種時期に決まりはありませんが、フィラリア症に感染しやすい時期は4月~11月なのでそれまでには接種しましょう。

蚊が活動する時期にフィラリア症の感染が多くなります。沖縄などの温暖な地域では通年でフィラリア対策が必要となります。

お住まいの地域の感染時期に合わせて注射を接種しましょう。

4月〜11月が一般的なフィラリア予防のシーズンで、特に春は予防前のフィラリア検査を受ける方で動物病院は混雑します。

冬の時期は比較的スムーズに注射を接種でき、その後1年間は動物病院へ通う必要はなくなります。

犬によっては予防薬の投薬と注射の接種を同時期に行うと体調が悪くなる場合もあります。

予防薬から注射への切り替えを行う場合は、接種する前に必ず獣医師に相談しましょう。

注射と予防薬どちらにすべきか

注射での予防と予防薬での予防をコスト面や安全面で比較していきます。

予防コストで比較

注射と予防薬でコストは異なります。注射ではフィラリア予防しかできず、ノミダニも予防する場合、注射の費用に加えてノミダニ予防薬の費用がかかります。

5kg未満10kg未満20kg未満40kg未満
注射予防8,000円10,000円14,000円20,000円
注射予防+ノミダニ予防22,200円25,200円31,700円42,300円
予防薬(8か月)20,176円21,422円24,000円27,911円
予防薬(12か月)30,200円31,600円35,400円41,200円

※「注射予防」費用は、マディー動物病院 桶川医院の金額で算出
※「予防薬」費用は、ネクスガードスペクトラの通販の金額で算出
※「予防薬(8か月)」は、感染時期の4月~11月で投薬した場合のコスト

フィラリア予防のみを検討しているのであれば、注射予防が一番費用を抑えることができます。

フィラリア注射とノミダニ予防薬の併用の選択もありますが、毎月予防薬を投薬する手間が増えます。

また、注射と予防薬の併用の安全性もはっきりしていないので、フィラリア予防とノミダニ駆除を同時にするのであれば、オールインワンタイプの予防薬がおすすめです。

犬用のオールインワン予防薬で有名なのは、ネクスガードスペクトラです。通販であれば1回あたり2000円台で購入できます。

安全面で比較

注射と予防薬のこれまでの副作用事例を比較していきます。

注射はゾエティス・ジャパン社の「プロハート12」、予防薬はべーリンガーインゲルハイムアニマルヘルス社の「ネクスガードスペクトラ」の副作用情報をもとにしています。

2016年〜2023年までの死亡件数は、以下の通りです。

・注射予防「プロハート」:39件

死亡、アナフィラキシーショック、嘔吐、下痢、起立困難、食欲低下、可視粘膜蒼白、血圧低下など(副作用報告件数104)

・予防薬「ネクスガードスペクトラ」:5件
死亡、嘔吐、下痢、元気消失、食欲低下、緑色便、CRP上昇、掻痒、白血球数増加(好中球増加)など(副作用報告件数15)

参考:
ネクスガードスペクトラ 動物医薬品等データベース
注射用プロハート12 動物医薬品等データベース

上記からもわかるように、注射予防の方が副作用の報告件数や死亡件数が多いのが実情です。

予防薬に関しては、下痢や食欲不振などの軽度な副作用でとどまることが多いですが、注射では死亡リスクも高まります。

より安全にフィラリア予防をしたい方は、予防薬を使用しましょう。

よくある質問

フィラリア注射におけるよくある質問をまとめています。

注射と予防薬どちらを利用している人が多いですか?

多くの飼い主が予防薬を使用しています。しかし、毎月の投薬が面倒に感じる飼い主にとっては、注射による予防がおすすめです。子犬、高齢犬、妊娠中の犬の場合は、注射の使用が推奨されていないため、予防薬を使用しましょう。

注射をした状態で予防薬を投薬することは可能ですか?

注射と予防薬の併用は、特に必要がない限り避けるべきです。注射を接種した状態で予防薬を追加して投薬することは、犬の体調が急変する可能性があります。もし二つの方法の併用を考えている場合は、獣医師に相談してください。

フィラリア注射とほかの注射は同時にできますか?

フィラリア注射と他のワクチン接種を同時に行うことは推奨されていません。異なるワクチンや治療を同時期に行う際は、必ず獣医師との相談が必要です。