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フィラリア治療のリスクや費用 – 治療までの流れ・治療中の制限

フィラリア治療には内科治療と外科治療があります。
フィラリア症の進行度合いや健康状態によって治療方法は異なり、症状が軽度なほど低リスクで治療することが可能です。
フィラリア治療の費用やリスク、治療までの流れを紹介します。

犬のフィラリア症の概要を知りたい方は下記のページをご確認ください。

どんな症状になるとフィラリア治療が必要なのか

フィラリア症は症状が出ていなくても、感染した時点で治療が必要な病気です。
感染初期は無症状なことが多く元気に見えますが、症状が進行すると軽い咳を始め、動くことを避けるようになります。
治療をせずに放置すると重症化し、最悪の場合、死に至る恐れもあります。
早期に治療を行うことで治りも早く、犬の負担も軽減されるので、 感染している場合や感染の疑いがある場合は早めに動物病院を受診しましょう。

フィラリア症の治療方法、費用、リスク

フィラリア症の治療は、投薬を行う内科治療と手術を行う外科治療があります。
それぞれの費用やリスク、具体的な治療法を紹介します。

治療方法概要
ボルバキア治療リスクが少ない治療方法。症状の進行を遅らせたり、フィラリアの増殖を抑えながら改善する。
フィラリア治療薬による治療フィラリア成虫が寿命を迎えるまで新しい感染を防ぐ方法。一般的な治療方法
成虫駆除薬による治療心臓や肺に寄生したフィラリアを死滅させる方法。リスクが高い。
手術による治療末期症状で他の治療法では対処できないときに行う緊急治療。犬の負担が大きく、リスクが高い。

ボルバキア治療

ボルバキア治療は、抗生物質を投薬するフィラリア症の治療です。
具体的には、抗生物質を使用してフィラリアと共生しているボルバキアという細胞内寄生虫を駆除する方法となります。

ボルバキア治療をすることで症状の進行が遅くなるとともに、フィラリアの増殖も抑えることが可能です。
また、ボルバキアを駆除することにより、フィラリアが早く死滅することが報告されています。

ボルバキア治療では、フィラリア予防薬との併用治療として取り入れられることも多くあります。
フィラリア予防薬を併用することで、新たなフィラリア症の感染を防ぎながら、症状の改善を行うことが可能です。

概要
治療薬抗生物質(ドキシサイクリン、アジスロマイシン等)
投薬1日2回を4週間
費用6,000円~10,000円
期間進行度合いで異なる
リスク抗生物質を飲み続けることで耐性菌ができ効き目が薄くなる場合がある。
補足フィラリア予防薬、ステロイドを併用する場合もある。
※ミクロフィラリアの死滅によるアナフィラキシーショックを防ぐため、ステロイドを使用します。

フィラリア予防薬による治療

フィラリア予防薬による治療は、フィラリア症の一般的な治療方法です。

フィラリア予防薬を犬に投薬し、新たな感染のリスクを抑えながら、現在体内に寄生しているフィラリア成虫の寿命を待ちます

症状が軽度の場合に効果的で、犬への負担も少ない治療方法です。
しかし、この治療法はフィラリアが寿命を迎えるまでの間、犬の心臓や肺にダメージを与え続ける可能性があります。

概要
治療薬フィラリア予防薬、ステロイド
投薬2週間間隔
費用3,000~6,000円
期間進行度合いで異なる
リスク成虫が寿命を迎えるまで心臓や肺にダメージを受ける場合がある(フィラリアの寿命:4~5年)
補足フィラリア予防薬、ステロイドを併用する場合もある。
※ミクロフィラリアの死滅によるアナフィラキシーショックを防ぐため、ステロイドを使用します。

成虫駆除薬による治療

成虫駆除薬による治療は、犬の肺動脈や心臓に寄生しているフィラリア成虫を直接駆除することを目的とした治療方法です。
これにより、フィラリアが体内で引き起こす悪影響を早期に取り除くことが期待できます。

しかし、この治療法は成虫駆除薬により死滅したフィラリア成虫が肺動脈に詰まり突然死する可能性やアナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応を起こしたりするリスクも伴います。

また、現在日本では成虫駆除薬を取り扱っている動物病院が少なくなっており、この治療法を受けることが難しいという現状もあります。

概要
治療薬成虫駆除薬
投薬
費用
期間進行度合いで異なる
リスク突然死する可能性、アナフィラキシーショックを起こす可能性
補足突然死、アナフィラキシーショックを防ぐため、抗炎症薬、ステロイド、抗生物質などを併用する場合もあります。

手術による外科治療(緊急手術)

フィラリア症の犬に対する治療の一つとして外科手術が考慮される場合があります。
この治療法は、心臓を直接切開し、寄生しているフィラリアを物理的に取り除くものです。
技術的にはフィラリアを除去することが可能であり、成功すれば犬の体内から即座にフィラリアを取り除くことができます。

しかし、この手術は全身麻酔が必要であり、犬への負担も大きいというリスクがあります。
そのため、深刻な症状を示す犬、他の治療法が効果を示さない、または適用できない場合に緊急として行われることが多いです。

術後のケアも重要となっており、愛犬の回復と健康維持のためには継続的なアフターケアが必須となります。

概要
費用進行度合いで異なる(65,000~)
期間1日(入院が必要になる可能性あり)
リスク全身麻酔、心臓の切開など身体的な負担が大きい
補足突然死、アナフィラキシーショックを防ぐため、抗炎症薬、ステロイド、抗生物質などを併用する場合もあります。

治療法は症状の進行度合いや健康状態で判断される

フィラリア症の治療法は、症状の進行度や犬の健康状態によって異なります。
特に老犬の場合、体力や持病などの問題も考慮しなければなりません。
そのため、フィラリアの治療を始める前に、しっかりと獣医師と相談することが重要です。

フィラリア治療までの流れ

フィラリア検査が陽性だった場合、疑いがある場合は、全身検査を行います。
全身検査を行うことにより、症状の重症度、フィラリアがどのくらい寄生しているかを確認し、治療方法を判断します。

  • 血液検査
    貧血や、肝臓、腎臓などの状態を確認する。
  • レントゲン検査
    心臓、肺、肝臓の状態を確認する
  • 超音波検査
    右心室や肺動脈内の状態、腹水などの有無を確認し、重症度を判断する

フィラリア治療で完治できるのか

犬のフィラリア症は、完治が難しい病気とされています。
治療により、症状の悪化や進行を抑制することは可能ですが、一度心臓や肺に与えられたダメージを完全に元に戻すことはできません。
その結果、ダメージを受けた臓器が弱ってしまい、他の病気や体調不良を引き起こすリスクが高まります。

フィラリア治療中は運動制限が必要になることもある

犬のフィラリア治療中にも心臓や肺に負担がかかるため、運動制限が必要な場合があります
激しい運動や長い時間の散歩も大きな負担となるので、愛犬が動こうとしても抑制しないといけない場面もあります。
治療の効果を最大限に高め、再発や合併症のリスクを低減させるために、治療中は獣医師の指示に従い適切に運動制限を行うようにしましょう。

フィラリア症は犬から人間に感染しない

フィラリア症は犬から人間に直接感染はしません。
しかし、陽性の犬を吸血した蚊がその後人間を吸血することで、間接的に人間に感染するリスクがあります。
感染した人間は、腫れや痒み、疼痛などの症状を示すことがあるため、感染対策は重要です。
愛犬の定期的な検査とフィラリア対策をしっかりと行うことで、家族全員の健康を守りましょう。

フィラリア症は早期発見・早期治療が大事

フィラリア症は、感染してからの期間が長くなるほど症状が悪化します。
フィラリア症により心臓が肥大してしまうこともあり、元に戻らない場合や他の病気を併発してしまう場合もあります。
症状が軽度のうちに治療を始めれば、回復も早く、愛犬にかかる負担も大幅に軽減されます。
もし、犬がフィラリア症の感染の疑いがある場合や、検査で陽性と診断された場合は、早い段階で動物病院を受診しましょう。
フィラリア症は早期発見、早期治療が重要です。

フィラリア治療のよくある質問

フィラリア治療のよくある質問を紹介します。

フィラリア治療はペット保険の対象ですか?

フィラリア症に感染する前に保険に入っていれば、保険金のお支払い対象になる場合もあるようです。
感染後はペット保険には入れません。

フィラリア予防薬はペット保険の対象ですか?

フィラリア予防薬はお支払い対象外です。
自己負担となります。

フィラリア症の治療費は最大どのくらいですか?

フィラリア症の治療費は、症状の進行度合いによって異なります。
ボルバキア治療やフィラリア予防薬での治療はフィラリアが駆除できるまで継続的な治療が必要となり、治療期間が長くなればなるほど費用も掛かります。
手術の場合、当日で終わることが多いですが、手術費用+入院代に加えて、術後のケアが継続的に必要です。
治療費の詳細は動物病院にお問い合わせください。

フィラリア治療を行えば元気になりますか?

フィラリアにダメージを受けた心臓や肺は治療を行っても元の状態に戻すことはできません。
重症化するほどダメージは大きいので、治療後も体調が優れない場合もあります。

フィラリア症に感染した犬の寿命は短くなりますか?

フィラリア症に感染すると心臓や肺にダメージを受けるため、健康な状態に比べて寿命が短くなるとされています。感染後は、重症化するほど寿命が短くなる可能性があります。