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クッシング症候群は、副腎という臓器の"はたらきすぎ"によって発症する病気です。
「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれます。
副腎はタマゴのように、「髄質」という中身を「皮質」というカラで包んだような形状をしています。
そして副腎皮質からは「ステロイドホルモン」が分泌され、動物の生命維持のために重要な役割を担っています。
しかしクッシング症候群を発症するとステロイドホルモンが過剰に分泌されるようになり、からだの中でさまざまな異変が起きてしまいます。
またクッシング症候群は犬では頻繁に見られますが、猫では非常にまれな病気だと言われます。
・犬のクッシング症候群 → 500頭に1頭程度
・猫のクッシング症候群 → 10万頭に1頭程度(人と同じくらいの頻度)
クッシング症候群はどんな病気なのか、症状や原因など解説します。
クッシング症候群は犬と猫のどちらにも発症する可能性がある病気です。
しかしそれぞれの症状や特徴には異なる部分がいくつかあります。
以下では犬と猫の場合に分けて、クッシング症候群の症状や特徴を解説していきます。
犬のクッシング症候群の場合、主な症状は次のようになります。
多飲・多尿 → 90~95%以上
皮膚症状 → 80%以上
最もよく見られる症状は多飲・多尿です。
水を飲む量が増え、オシッコもたくさんするようになります。
次いで、何らかの皮膚症状が見られることも多いです。
皮膚が薄くなる、からだの両側に対称的な脱毛、色素沈着により皮膚が黒ずむなどさまざまな症状があります。
これらの他にも、以下の症状が出てくることがあります。
・ビール腹のようにお腹がふくらむ
・舌を出してハァハァと呼吸する(パンティング)
・食欲の増加/減少
・外からの刺激に反応しなくなる(沈うつ行動)
など
犬のクッシング症候群は、8才以上になってから発症することが多いです。
お腹が大きいのはただの肥満、抜け毛は年のせい、など飼い主さんが見過ごしてしまうこともあるので注意しましょう。
またクッシング症候群は、他の病気の併発が多いことも特徴です。
細菌やウイルスによる感染症、糖尿病、高血圧など併発しやすい病気は多数あります。
猫のクッシング症候群は、中~高年齢になってから発症することが多いです。
ほとんどの場合において、糖尿病を併発しています。
初期症状には、犬のクッシング症候群と同じように多飲・多尿が見られます。
ですが糖尿病による症状なのか、あるいはクッシング症候群による症状なのか区別が難しいです。
クッシング症候群が進行すると、さらに皮膚症状が現れます。
被毛のツヤがなくなって毛並みが荒くなる、皮膚の菲薄化(ひはくか)などの症状です。
特に菲薄化が起こると皮膚が薄く、弱くなるためさまざまな問題が起こります。
菲薄化した皮膚は毛づくろいをしたり病院の診察を受けるだけでも傷が付くほどもろく、その傷口から二次感染を引き起こすこともあるのです。
またクッシング症候群はステロイドホルモンの分泌が過剰になる病気ですが、このホルモンは「インスリン」の効きを悪くすることがあります。
そのため糖尿病の治療のためにインスリンを投与しても血糖値が下がらない時、クッシング症候群を疑われることが特徴的です。
犬や猫のクッシング症候群の原因には、3つのタイプがあります。
・下垂体性 : 脳の下垂体に起きた異常が原因
・副腎腫瘍性 : 副腎にできた腫瘍が原因
・医原性 : お薬の投与が原因
これらの中でも下垂体性と副腎腫瘍性に関しては、自然発生することがあります。
犬でも猫でも、クッシング症候群が自然発生する時は約8割が下垂体性によるものだと言われます。
脳にある下垂体は、副腎皮質に対して「ホルモンを作れ!!」と命令を出す器官です。
より正確に言うと下垂体からはACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が放出され、ACTHは副腎皮質からのステロイドホルモンの分泌を促します。
下垂体がACTHを放出 → ACTHにより副腎がホルモンを分泌
下垂体に異常が起きると、ACTHが過剰に分泌されるようになります。
すると副腎皮質はACTHの刺激を受け続け、大量のステロイドホルモンを分泌してしまうことでクッシング症候群を発症します。
ところが副腎に腫瘍ができてしまうと、副腎皮質は下垂体によるコントロールから外れてしまいます。
ACTHがなくとも副腎皮質は勝手にステロイドホルモンを分泌するようになり、やはりクッシング症候群を引き起こしてしまうのです。
またもう1つの医原性は、お薬の副作用によりクッシング症候群が起こることを表します。
原因になるお薬は、アトピーを始めさまざまな病気の治療に用いられる「ステロイド薬」です。
なお犬の場合は長期的なステロイド薬の投与が引き金になることがありますが、猫では医原性による発症例は少ないと言われます。
犬や猫のクッシング症候群の治療方法は、原因によって異なります。
・下垂体性 → 薬物療法、外科手術、放射線療法
・副腎腫瘍性 → 副腎の摘出、薬物療法
・医原性 → お薬の投与の中止や減量
クッシング症候群を治療するためには、まず原因を特定しなければなりません。
クッシング症候群の原因が下垂体にある場合、治療をするには薬物療法・外科手術・放射線治療という3つの選択肢があります。
これらの治療を受けた後の生存率に関してはどれも差がなく、ペットの状態や飼い主さんの経済状況などを考慮しながら治療計画を立てていきます。
中でも、最も行われる治療は薬物療法です。
「ミトタン」や「トリロスタン」、「ケトコナゾール」といったお薬がよく用いられています。
ミトタンは副腎皮質のはたらきを抑えることでクッシング症候群を改善するお薬です。
対してトリロスタンやケトコナゾールは、ステロイドホルモンを作るために必要な酵素のはたらきを阻害する作用を持ちます。
それぞれの作用は全く異なるため、ペットの病状に合わせて使い分けられます。
また下垂体が腫れていたり、腫瘍になっている場合にはお薬を使わずに外科手術や放射線療法を行うこともあります。
副腎腫瘍性のクッシング症候群で第1選択になるのは、手術による副腎の摘出です。
腫瘍ができた副腎を取り除くことに成功すれば、クッシング症候群の改善に大きな一歩を踏み出すことができます。
ただしペットの状態によっては、獣医師さんの判断でお薬での治療を行う場合もあります。
使われるお薬はミトタンやトリロスタンなど、下垂体性の場合と同様です。
医原性のクッシング症候群は、ペットに投与しているステロイド薬が原因で発症しています。
そのためお薬の投与を中止、あるいは減量していくことで改善が可能です。
しかし、いきなりお薬の投与を止めてしまうと、ペットに副腎不全が起きてしまうことがあります。
獣医さんと相談しながら、徐々に減薬していきましょう。
また基礎疾患についても、ステロイド薬以外の治療方法を検討していきます。
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