心臓病
犬、猫用の利尿剤です。利尿作用により余分な水分を排出する働きを持ちます。循環血液量の増加によって起こる肺水腫、浮腫、心臓病の治療に用いられ、肺水腫やうっ血性心不全による咳や呼吸困難など浮腫の症状を改善します。
心臓病について
高齢の犬や猫に多く見られる心臓病。
近年でのペットの高齢化にともない、心臓病にかかる犬や猫も増えています。
心臓病といえば、日本人の死因の大部分を占めている病気です。
そのため"命に関わる病気"というイメージが強く、ペットが心臓病を発症した時に不安に思う飼い主さんも多くいらっしゃいます。
犬や猫の心臓病は、いったいどんな病気なのでしょうか。
またペットが心臓病と診断された場合、飼い主さんはどうしたら良いのでしょうか。
ここでは犬や猫の心臓病に用いる薬の紹介と共に、症状や原因、治療などを解説していきます。
心臓病の症状

犬や猫の心臓病に見られるのは、主に次のような症状です。
・せき(夜中にひどくなりやすい)
・30回/分を超えるほど呼吸が荒くなる
・呼吸困難
・チアノーゼ(舌が紫色になるなど)
・動くのを嫌がる、寝ている時間が増える
・突然、意識を失う
・足やお腹などのむくみ
・後ろ足のマヒ
・食欲や元気がなくなる
など
これらの症状はあくまでも一例ですが、初期症状としてはペットがせきをしたり、呼吸を苦しそうにする様子がよく見られます。
病気が進行するとさまざまな症状が現れるようになり、末期の頃には前述の全ての症状が出ることもあります。
またペットの心臓病に関して、注意したい点がいくつかあります。
犬や猫が心臓病にかかった時にどんな症状が現れるのか。
これは心臓の状態により異なるため、「この症状が出たら心臓病」というようなはっきりとした症状はありません。
しかも心臓病の症状の中には、他の病気と区別ができないようなものもあります。
例えばペットがせきをしている時には寄生虫やウイルスの感染などの可能性も考えられ、一般の方がペットの心臓病を見極めることは困難です。
その上ペットの心臓病は突然死のリスクもあり、間違った判断をしてしまえば命に関わります。
ペットに異変が見られた場合は個人で判断をせず、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。
簡易チェック法「キャピラリテスト」
キャピラリテストとは、犬や猫の血圧が低下していないかを確かめるために行う簡単なチェック方法です。
心臓病を患っていると心臓のはたらきが弱まり、血圧の低下が見られることがあります。
キャピラリテストを行った結果が陽性であった場合、なんらかの要因でペットの血圧が下がっているかもしれません。
家庭でも次のような手順で簡単にできるので、ぜひ試してみてください。
1.犬・猫の歯茎を白くなるまで指で押す
2.指を離し、元の色に戻るまでの時間を計る
2秒未満で元の色に戻った → 陰性(血圧は正常)
元の色に戻るまで2秒以上 → 陽性(血圧が低下している可能性あり)
ただし正確なチェックではないので、あくまでも参考程度に留めましょう。
またチェックを行う際は、ペットに手を噛まれないように注意してください。
心臓病の原因

犬や猫の心臓病の原因として考えられるのが、主に次のようなことです。
・遺伝
・加齢による影響
・感染症
・特定の犬種や猫種
など
生まれつき心臓に奇形がある時、あるいは後天的な原因によって犬や猫の心臓病は発症します。
ペットの家族歴、または犬種により発症しやすい場合もありますが、基本的に心臓病はどんな犬や猫にでも起こりえます。
また心臓は、全身に血液を循環させる"ポンプ"のようなはたらきがあります。
心臓から肺に送られた血液は全身をまわり、それから再び心臓へと戻ってきます。
ところが心臓になんらかの異常が起こり、こうしたはたらきに支障をきたしてしまう場合を心臓病と呼びます。
ただ動物のからだはよくできていて、多少の異常が起こっていても心臓は一生懸命はたらくことでカバーします。
そのため心臓以外の部分には影響が現れず、症状が見られないこともあるのです。
しかし見た目に何の症状が出ていなくても、心臓の疲労は蓄積していきます。
病気が進行していくと心臓は疲れ切ってしまい、本来のポンプとしての役目を果たせなくなります。
すると肺や腎臓などの臓器にも影響が現れるようになり、次第に犬や猫の体力も奪われていきます。
犬や猫の心臓病は、命に危険が及ぶ前に早期発見をすることが大切です。
心臓病の種類

犬や猫の心臓病は原因や、心臓にどのような異常が起きているかによってさまざまな種類に分けられます。
ここでは犬や猫によく見られる、代表的な4つの心臓病をご紹介していきます。
犬の発症率No1の僧帽弁閉鎖不全症
犬の中でも特に多い心臓病が、僧帽弁閉鎖不全症です。
心臓には、血液の逆流を防ぐための「僧帽弁(そうぼうべん)」という部位があります。
右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋に分かれている心臓ですが、僧帽弁は左心房と左心室の間に存在しています。
普通であれば僧帽弁は、"左心房→左心室"の順路で血液が流れる時にだけ動きます。
左心房から左心室に向かって開き、心臓の中で血液が一方通行に流れる仕組みを作っているのです。
しかしこの僧帽弁がうまく動かなくなると、僧帽弁閉鎖不全症を発症します。
僧帽弁閉鎖不全症は6才以上の犬になると発症率が高まるという特徴がありますが、特に小型犬への発症が多く見られます。
・チワワ
・ポメラニアン
・シーズー
・マルチーズ
・キャバリア
・ヨークシャーテリア
・トイプードル
など
その愛らしさや飼いやすさから人気が高い小型犬ですが、飼育の際は心臓病に注意が必要です。
犬の先天性として多い動脈管開存症
「動脈管」は、肺動脈と大動脈をつないでいる血管です。
子犬が母犬のお腹の中にいる時に、肺動脈から大動脈への抜け道としての役割を担っています。
そして子犬が産まれて肺で呼吸をするようになると、動脈管は必要がなくなり閉じてしまうのが普通です。
しかし発育の過程で動脈管が閉じずに残ってしまうと、動脈管開存症を発症します。
心臓から全身に血液が送られる「体循環」のルートでは心臓から大動脈へと血液が流れていきますが、この時に動脈管があると血液の一部が肺動脈にも流れてしまいます。
すると肺には必要以上の血液が送られることになり、負担がかかってしまうのです。
動脈管開存症も、小型犬にかかりやすい心臓病だと言われます。
猫や大型犬によく見られる心筋症
心臓にある「心筋」という筋肉に異常が起こる病気が、心筋症です。
心筋症には次のような種類があります。
・肥大型心筋症 : 心筋が厚くなることで発症
・拡張型心筋症 : 心筋が薄くなることで発症
など
心筋の異常は、心臓のはたらきを大きく損ないます。
心臓はポンプとしての役目を十分に果たせなくなってしまい、からだは血液が足りない状態になってしまいます。
肥大型心筋症は猫に、拡張型心筋症は大型犬にそれぞれ発症しやすいと言われます。
特に肥大型心筋症はメインクーンやラグドール、アメリカンショートヘアなどの猫種がかかりやすく、発症には遺伝が関わっていると考えられています。
寄生虫により起こるフィラリア症
寄生虫の一種である「フィラリア」によって起こる症状です。
"犬の病気"としてよく知られるフィラリア症ですが、犬だけでなく猫にも発症することがあります。
フィラリアは成長すると30cmになることもある寄生虫で、犬や猫の心臓や肺動脈に住み着きます。
すると血液の循環が妨げられ、犬や猫のからだに大きな負担を与えてしまいます。
特に猫の場合では治療法がなく、突然死を招くこともある怖い病気です。
しかし近年では「フィラリア予防」が一般的になり、フィラリア症にかかる犬や猫は少なくなってきています。
心臓病は治る?

結論から言うと、犬や猫の心臓病は治る病気です。
その治療は、主に「手術」と「お薬の投与」の2種類に分かれます。
手術
例えば人が心臓病にかかった場合だと、基本的に手術を行います。
患者さんの年齢や症状により差はありますが、医療技術も進歩しているため心臓病の手術の成功率は年々増加しています。
一方で犬や猫の場合では、からだのサイズの違いから「手術は難しい」という考え方が一般的でした。
それが近年では動物での医療技術も発達し、犬や猫の心臓病の手術成績も上がってきています。
お薬の投与だけで心臓病を完治させることはできませんが、手術が成功すれば治る可能性が出てきます。
しかし犬や猫の心臓病の手術には高水準の技術や設備が必要になり、手術ができる動物病院は限られてるのが現状です。
また心臓病の種類によっては手術ができない場合もあるので、手術が万能だという訳ではありません。
お薬の投与
お薬の投与は、犬や猫の心臓病において基本となる治療です。
対症療法であるため完治は望めませんが、お薬によりペットのからだの負担が軽くなるため寿命を伸ばすことにつながります。
心臓病の治療に使われるお薬には、さまざまな種類があります。
出番が多いのは、主に次のような種類のお薬です。
・ACE阻害薬(フォルテコール、エナカルド、チバセンなど)
・カルシウム拮抗薬(コニール、ノルバスクなど)
・強心薬(ベトメディン、ピモベハートなど)
・β遮断薬(セロケン、アーチストなど)
・利尿剤(ラシックス、ルプラックなど)
これらのお薬は、それぞれ作用が異なります。
そのため心臓病の進行具合によってお薬の種類が決まり、特にACE阻害薬は病気が初期段階の時から使われるお薬です。
ACE阻害薬だけで症状がコントロールできず、心臓病が悪化している場合には必要に応じて他の種類のお薬も組み合わせて治療を行っていきます。
ただしお薬の投与には、注意点があります。
どんなお薬でも副作用が付き物ですが、犬や猫の心臓病のお薬の場合には肝臓や腎臓に副作用が現れることがあります。
すると肝臓や腎臓の副作用に対するお薬を追加する必要が出てくることもあり、投薬の負担が増えてしまいかねません。
またお薬が効くことで、ペットの症状も治まってきます。
しかし体調が良くなったように見えていても、それはお薬によってコントロールしているに過ぎません。
飲み忘れてしまうと再びペットが調子を崩してしまうので、飼い主さんには心理的な負担も現れることでしょう。
心臓病の犬・猫の散歩や食事について

ご家庭のペットが心臓病になってしまった場合、飼い主さんは大きなショックを受けてしまうでしょう。
ですが自宅でもしっかりとケアをしてあげることで、ペットのからだへの負担を軽くすることができます。
犬や猫が心臓病を患ってしまうと、心臓は普段以上にはたらくようになります。
したがって普段なら何ともないような動作でも、心臓には大きなダメージになることもあるのです。
心臓病の悪化を防ぐには、心臓をがんばらせないためにペットを安静にさせることが重要です。
犬の散歩に行く時は時間を短めにする、突然走り出すことは控えるなどの運動制限をしてあげましょう。
猫の場合では、外出をさせないようにしてください。
また食事に関しては、ベストな選択はありません。
例えば高級なフードやサプリメントを与えてみると、健康に良さそうな気がします。
しかし犬や猫には、それぞれ個体差があります。
そのため、必ずしもペットのからだに合うとは限らないのです。
ただどんなペットにも共通して言えるのは、「悪い食生活は避けるべき」だということです。
ペットの好物(ジャーキーなど)ばかりあげる、人間用のお菓子を与えるなど・・・。
このような食事を与えていると、ペットのからだに良くありません。
悪い食生活を避け、いつも通りの食事を与えてあげましょう。