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犬や猫であっても、肝臓の機能は人間のそれとほとんど変わりません。
人間と同様に、胃の隣に位置する肝臓はたくさんの働きを担っている、非常に重要な臓器だと言うことができます。
そして、人間と同じく犬や猫の肝臓も「沈黙の臓器」と呼ばれています。
肝臓には高い再生能力が備わっているため、多少の損傷では症状が現れることはありません。
しかし損傷が一定の限度を超えた途端に一気に症状が現れ、そうなった時点ですでに深刻な状態になってしまっていることが多いので、そう呼ばれるようになったのです。
犬や猫は、私たちのように声を出して症状を訴えることができません。
生命の維持に関わる重要な器官である肝臓の病気は、末期まで進行してしまうと回復が困難になります。
また最悪の場合には、死に至る危険性もあるのです。
肝臓病の原因や症状、普段から行える予防方法などを一緒に見ていきましょう!
肝臓とは、体重の2~3%にあたる重さを持っている体内で最大の臓器のことです。
これは犬や猫の場合でも、人間と同じなのです。
肝臓には様々な役割がありますが、その中でも特に重要とされているものがあります。
食事などで体内に入った栄養素は、胃や腸で消化・吸収され門脈を通り肝臓へ送られていきます。
その過程で糖質はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸にとグリセリンへ分解されますが、肝臓ではさらにブドウ糖をグリコーゲンに合成したり、アミノ酸をタンパク質に再合成したりもします。
糖質から最終的に代謝されたグリコーゲンは、エネルギー源として血糖値を一定に保つのに使われるために、肝臓に貯蔵されます。
貯蔵されたグリコーゲンは筋肉を動かすブドウ糖が不足した際や、血糖値が低下した際などにそれらを補うために、必要に応じて取り出され消費されます。
体内に侵入してしまった有害な物質を酸化や還元、加水分解などの化学反応で無毒化を行っているのも肝臓です。
例えば、タンパク質の分解の過程で発生するアンモニアはそのまま神経毒となってしまいますが、肝臓ではアンモニアを尿素に分解し、尿として体の外に排出できるようにします。
薬やサプリメントでも、肝臓で成分が分解されることで初めて効果を発揮するものもあるのです。
その中でも最大の解毒機構と呼ばれているのが、脂溶性の高い化合物を水溶性の化合物に代謝することで、排出しやすくなる「グルクロン酸抱合」となります。
しかし猫の場合はこれが備わっていないため、人間や犬に比べて肝臓の解毒能力は弱くなっています。
人間や犬にとっては無害な成分だとしても、猫にとっては毒であることが多いのもこのためです。
肝臓では脂質を分解した脂肪酸とグリセリンからコレステロールを合成し、そのコレステロールを元に胆汁を生成します。
胆汁は腸内で消化液として分泌され、脂肪を消化・吸収する役割を担います。
この他にも酸素による化学変化を中心に多くの役割を持っていて、細かく分類すれば1500以上の働きを行うことが判明しています。
このように休むことなく働き続けている肝臓ですが、高い再生能力を持ちまた痛みを感じる神経が存在しないために、損傷があっても痛みや違和感などがなく異変に気がつきにくい臓器なのです。
肝臓病は肝臓が炎症を起こすなどで細胞が破壊されたり、脂肪が蓄積しすぎたりなどで正常に機能しなくなってしまう病気です。
複数の役割を担っている肝臓なだけに、病気を発症すると様々な症状を伴います。
しかし前述の通り病気の発症や進行に気がつきにくいといった厄介な特徴があり、病気に気がついた時にはすでに悪化している可能性が高いです。
肝臓の病気を早期発見する方法は、血液検査が有効です。
ALT(GPT)やAST(GOT)、γ-GTPなどの数値から、異常を発見することができます。
γ-GTPなどは人間の健康診断などで聞いたことがあるかもしれませんが、これらは肝臓内の酵素の量の数値なのです。
肝臓に損傷がある場合に血液中にこれらの酵素が漏れ出すため、数値が高くなるという仕組みです。
酵素の数値が高ければ、必ずしも肝臓の病気にかかっているというわけではありませんが、例えばASTの数値が高いことから肝炎の疑いがあるなど、各項目から推測することが可能になります。
また症状が進行してしまうと、肝硬変や劇症肝炎を引き起こします。
その場合には体内で作られるアンモニアが排出できなくなり、血液中に高濃度のアンモニアが蓄積され、その毒素によって意識障害に陥る肝性脳症という合併症を発症する可能性があります。
このことからも、定期的に検査を受けることを心がけるようにしましょう。
肝臓病の原因には様々なものがあります。
よって肝臓病と診断されても、原因の特定ができるとは限りません。
現在考えられている主な原因は、以下のようになります。
肝臓病を発症する原因として最も多いのが、食生活だと言われています。
フードに含まれる添加物によって肝臓に負担がかかり、そのダメージが蓄積されることで肝臓の不調へと繋がります。
また食べ過ぎや脂肪分過多の食生活も、肥満と同時に脂肪肝(肝リピドーシス)を引き起こしやすくなります。
運動不足による肥満も肝臓病の原因となります。
銅やヒ素、水銀、鎮痛剤、ホルモン剤などの成分が体内に入り、蓄積されると肝臓へのダメージとなって、肝機能障害を引き起こします。
肝臓病の原因で最も多いのは食生活ですが、その他にも細菌やウイルスに感染することで、肝臓に炎症が起こり肝機能に障害が起きることもあります。
イヌ伝染性肝炎やレプトスピラ症などを併発します。
若齢であっても突発的に肝機能に障害が起こる場合は、遺伝的な原因が疑われます。
遺伝による肝臓病のほとんどは、先天的な「門脈体循環シャント」が直接的な原因です。
門脈体循環シャントとは、通常であれば腸内などで吸収されるアンモニアなどの毒素を肝臓に送る門脈という血管が、先天的に全身に流れる血管に繋がっている血管の奇形のことを指します。
無毒化されない毒素が全身にまわる他に、本来ならば肝臓に送られる栄養素も不足してしまうため肝臓が成長せず、肝機能に障害が起こります。
この先天的な門脈体循環シャントは、シーズー、ヨークシャテリア、ミニチュアシュナウザーなどに多く見られます。
これは稀ですが、他の部分にできた悪性の腫瘍(がん)が肝臓に転移して腫瘍となる場合があります。
肝細胞が腫瘍細胞となり、肝機能に深刻な影響を与えます。
この他にも、慢性的にストレスを溜め込むことで肝臓に負担がかかり、肝機能の低下に繋がる場合もあります。
肝臓病は主に肝臓が炎症を起こして肝細胞が破壊されたり、脂肪が蓄積されすぎたりして本来の機能が発揮できなくなった状態です。
前述した通り肝臓には多くの働きがあるので、肝臓にこれらの障害が起きてしまうと体に様々な不調をきたすことになります。
肝臓病の初期の症状に以下のものがあります。
・元気がない
・食欲不振
・体重の減少
・嘔吐、下痢、軟便
・多飲
・排尿が多い
このように肝臓病の初期症状は目立つ特徴がないうえに、症状が表面化しないことが多いので単なる疲労や老化によるものだと見過ごされる、または他の病気と区別がつきにくく判断が難しいといったことが多くあります。
ペットによっては末期になるまでほとんど症状を見せず、元気に見えることもありますが代謝や解毒作用の異常は確実に深刻な状態となっているでしょう。
また猫の肝臓病に多く見られる症状に、肝リピドーシスというものがあります。
これはいわゆる脂肪肝で、過剰な中性脂肪が蓄積されている状態です。
肝臓病の初期症状で食欲不振が現れることがありますが、肥満の猫はこのときに48時間ほど絶食しただけで肝リピドーシスになってしまう危険性が高くなります。
絶食によってタンパク質が不足することで脂肪の代謝機能が低下し、中性脂肪として肝臓に蓄積されてしまうからです。
肝臓の不調が末期まで進行した状態のことを、肝硬変と言います。
肝硬変はその名の通り、肝臓が繊維化して小さく硬く変質してしまう病気です。
肝硬変にまで悪化してしまうともはや肝臓の機能は大半が失われていて、回復させることは現代の医学を持ってしても非常に困難なのです。
肝臓の高い再生能力もすでに機能を止めてしまっています。
治療を行うにしても完治は不可能なので、症状の進行を最低限に食い止めるための対処療法となります。
結果、肝硬変を患ったペットは大きく余命を削られることになるのです。
肝硬変にまで進行すると症状がはっきり現れてくるのに加えて、肝臓周辺に痛みを伴います。
ペットを抱きかかえた時に痛そうに鳴いたり、暴れたりするようになるのもこの時です。
またしばしば「黄疸」が見られるようにもなります。
黄疸とは皮膚や歯ぐき、眼球の白目部分が黄色ぽくなる症状ですが、これは肝臓内の物質であるビリルビンが血中にたくさん流れ出していることが原因です。
さらに「腹水」という、肝臓で作られるアルブミンの量が低下して血液の浸透圧が下がり、腹部に体液が溜まって硬く張ってしまう症状が見られたり、肝臓で分解できなくなったアンモニアが高濃度に蓄積され、脳にまでダメージを与える恐れもあります。
高濃度のアンモニアが脳にダメージを与えると、痴呆症のように認知能力が低下したり攻撃的になったり、意識障害を引き起こすこともあります。
この症状を「肝性脳症」と呼びます。
肝臓病には様々な原因があるため、原因の特定ができた場合はその原因の治療を優先して行います。
もともと肝臓には高い再生能力がありますので、肝臓に負担をかけている原因を取り除いた後は、食餌療法を中心として肝機能を回復させていきます。
肝臓へのダメージを悪化させないように抗酸化剤や抗炎症剤などを用いて投薬治療を行うこともありますが、肝臓の治療においては食事管理が非常に重要です。
肝リピドーシスが見られる際には脂肪分の制限が必要ですし、分解できなくなったアンモニアの血中濃度が高くなった高アンモニア血症が起こった際は、タンパク質を制限します。
これはタンパク質の代謝によって、アンモニアが生成されるためです。
しかし肝臓の再生にはタンパク質が必要になってきます。
過剰摂取にならないよう十分に注意しながら、必要最低限与えるようにしましょう。
このためには、アミノ酸スコアの高い良質なタンパク質を選んで与えてください。
アミノ酸スコアの高い食品は消化性に優れアンモニアの代謝も少ないため、肝臓への負担が少ないといった特徴があります。
症状によって脂肪分とタンパク質の量に注意しながら肝臓の再生に有効な亜鉛、カルニチン、アルギニン、ビタミンを積極的に摂取できるように管理しましょう。
また血液の濃度を下げたり毒素を排出しやすくしたりするために、新鮮なお水をよく飲ませるようにすると良いです。
さらにサプリメントですが「デナマリン」というものがあります。
SAMe(S-アデノシルメチオニン)とシリビニンという2つの有効成分の相互効果で、肝臓の解毒作用を高めて肝細胞の再生を促す作用があります。
様々な原因がありながら、なかなか症状が現れない肝臓病の予防は普段からの食生活が鍵となります。
普段から食べているフードが肝臓に負担をかけるような添加物の多く含まれたものであれば、肝臓へのダメージはどんどん蓄積されていってしまいます。
なるべく成分がはっきりとしている良質なものを与えるようにしましょう。
また脂肪分やタンパク質、塩分の摂取が過剰になってしまうと、肝臓の負担や脂肪肝の原因になり得るので、各種栄養素のバランスが取れた食事内容になるように心がけてください。
タンパク質は肝機能を維持するのに必須な栄養素ですが、過剰摂取になってしまうと代謝で生成される有害なアンモニアも増え肝臓が解毒しきれなくなってしまいます。
目安として100gあたりのタンパク質が25g程度のフードで、必須アミノ酸なども多い良質のものを選び、脂肪分と塩分は控えめになあるように気をつけると良いでしょう。
特にペットの好みを重視して、嗜好性の高いおやつやジャーキーばかり与えてしまうのには、改善が必要です。
食べ過ぎによる肥満にも注意しなければいけません。
最近では手作りのフードを与える飼い主さんも多くいらっしゃいますが、もちろんその際も栄養のバランスには考慮してください。
青魚、ごま、カボチャなどが肝臓に良い食材だと挙げられます。
市販のフードでも肝臓ケアの効果を謳ったものがあるので、それを与えるのも有効です。
人間の食べ物は安易に与えないように気をつけましょう。
さらに肥満とストレス防止のために、毎明晩の散歩などの適度な運動も効果的です。
そして何よりも、動物病院で定期的に検査を受けることが肝臓病の確実な早期発見・早期治療に繋がるのは言うまでもありません。
ペットの命を守るためにも、しっかりと予防を行うことを心がけましょう。
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