膿皮症・化膿止め
ペットの膿皮症について
膿皮症という皮膚の病気があることを知っていますか?
膿皮症は命に関わってくる病気ではありませんが、放置すると強い痒みや膿などの症状が出てくる厄介な病気です。
膿皮症はペットの皮膚トラブルの中でも発症しやすい病気です。
あなたの大切なペットも決して他人事ではありません。
愛犬や愛猫に苦しい思いをさせないためにも、膿皮症の原因や症状、治療方法などの知識を一緒に身につけていきましょう!
膿皮症の原因

膿皮症とは
膿皮症は、細菌への感染が原因で発症する皮膚の病気のことです。
ペットが身体を痒そうにしていたり、皮膚に湿疹などが発生していたりする場合は膿皮症を発症しているかもしれません。
膿皮症は犬と猫のどちらにも発症する病気で、特に犬においての膿皮症は最もよく見られる皮膚病だと言われています。
反対に猫の膿皮症は非常に少なく、発症することはほとんどありません。
膿皮症の原因
膿皮症は細菌による感染症の1つですが、一体どのような細菌が原因になるのでしょうか。
犬の膿皮症の原因だと、約9割が「ブドウ球菌」によるものです。
ブドウ球菌は、犬や猫の皮膚に住み着いている常在菌のうちの1つになります。
猫の膿皮症の場合にもブドウ球菌が原因で発症することがありますが、他に「黄色ブドウ球菌」が原因となることも多いです。
2013年にポーランドで行われた調査によると、健康な猫の6匹に1匹の割合で黄色ブドウ球菌を身体に持った猫がいるとのデータが報告されています。
つまりブドウ球菌と黄色ブドウ球菌はどんな犬や猫でも持っている可能性が高く、決してめずらしい細菌というわけではないのです。
またこれらの細菌による毒性もほとんどありません。
しかし何らかのきっかけでブドウ球菌や黄色ブドウ球菌がペットの体内に侵入したり、増殖したりすると膿皮症を発症してしまうのです。
ブドウ球菌などが増殖して膿皮症を発症するのはなぜなのか。
原因として以下のことが考えられます。
・皮膚にできた傷
・体調不良
・細菌が増殖しやすい環境
・他の病気の影響
などです。
ペットがケガをしたら傷口から細菌が侵入してしまうことがありますし、体調が悪いと身体の免疫力が落ちて細菌の増殖を許してしまい、膿皮症の発症に繋がります。
また、細菌は高温多湿な環境を好みます。
夏場など気温が高くジメジメしている時期には膿皮症が発症しやすいので、注意が必要です。
さらにペットが何かの病気を患っている場合も気をつけるようにしましょう。
病気そのものや、病気の治療薬などによってペットの身体の調子が崩れ、膿皮症が起こりやすくなる恐れがあります。
特にニキビダニ症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、脂漏症などから二次的に膿皮症を引き起こすことが多く見られます。
これらの原因の他にもシャンプーのしすぎや、合わないシャンプーを使っているなどで膿皮症の引き金になる場合や、もともとメンタルが弱いペットだと精神的に大きいダメージを受けて免疫力が低下し、発症する場合もあります。
このように膿皮症の原因には様々なものが挙げられるのです。
膿皮症の症状

膿皮症は犬や猫の皮膚に細菌が感染することで発症する病気ですが、膿皮症の症状を解説するために、まず犬や猫の皮膚の構造についてを理解する必要があります。
犬や猫の皮膚は大きく分けると、
(外側)表皮→真皮→皮下組織(内側)
というように3層構造になっていて、さらに皮膚の内側には体毛が生えている「毛包」と呼ばれる部分があります。
そして犬と猫で発症しやすい部分が異なり、またかかりやすい品種があります。
犬の発症しやすい部分
顔、脇の下、お腹、股、足の指の間など
かかりやすい犬種
・シーズー
・トイプードル
・ダックスフンド
・ミニチュアシュナウザー
・フレンチブルドッグ
・ゴールデンレトリバー
猫の発症しやすい部分
顔、口のまわり、お腹、足の付け根、足の指の間など
かかりやすい猫種
・ヒマラヤン
・ペルシャ
ヒマラヤンやペルシャは、長毛で鼻がぺちゃんこなことから顔にシワができやすく、シワの間に炎症が生じて膿が溜まりやすいので要注意です。
膿皮症の症状
膿皮症の症状は細菌がどの深さまで感染しているかによって3種類に分類されます。
表面性膿皮症
皮膚の最も浅いそうである表皮で菌が増殖して発症する膿皮症のことです。
膿皮症の初期段階と呼ばれる表面性膿皮症ですが痒みが発生し、ペットが皮膚を掻いて傷が深まり急激に悪化してしまうことがあります。
表在性膿皮症
皮膚の表面より少し深くなった位置にある、真皮という細胞に菌が侵入することで発症する膿皮症のことです。
猫に見られることは稀ですが、膿皮症が悪化してくると皮膚の表面に膿胞と呼ばれる、ニキビのように白く膿んだ突起物が出てきます。
膿胞はやがて毛包で炎症を起こし、脇の下や胸にまで症状が広がっていきます。
深在性膿皮症
真皮層よりさらに深くにある皮下組織にまで細菌が入り込んでくることによって、発症する膿皮症のことを指します。
毛包が破壊されて皮膚の組織がダメージを受け、激しい痛みや痒みを伴います。
繰り返し出血をするようになってしまうのでカサブタができ、菌による化膿や悪臭が現れます。
他にも発熱や食欲不振などの様子が見られることもあるので注意しましょう。
このように種類によって症状も異なってきますが、痒み、カサブタ、ぶつぶつ(丘疹)、フケなどが主な症状です。
また膿皮症を発症し、その痒みで身体を掻きむしることで脱毛や色素沈着になる場合も少なくありません。
膿皮症の治療

基本的に膿皮症の治療には、抗生物質の投与を行います。
膿皮症の治療に様々な抗生物質が用いられますが、第一に候補になるのはセフェム系と呼ばれるお薬になります。
例えば有効成分セファレキシンを含有した「リレキシペット」は、膿皮症の原因となるブドウ球菌に対して、高い殺菌力を発揮します。
しかし細菌が耐性を獲得している場合には、セフェム系のお薬の効果が得られないこともあります。
その際には、膿皮症への治療効果がある他の抗生物質を探さなくてはなりません。
治療かかる期間ですが、表皮だけの感染の場合には3週間ほど抗生物質の投与を続ければ、十分に治療できます。
また表面性膿皮症や表在性膿皮症においては、薬用シャンプーの使用も効果的です。
膿皮症の際に使用するのは、クロルヘキシジンや過酸化ベンゾイルといった抗菌成分が含まれているものになります。
深在性膿皮症だと治療にかかる期間が長引いてしまい、1~3ヶ月ほど投与を継続しなければいけないこともあります。
他に痒みがひどい時にはステロイド薬などの痒み止めを使うこともあります。
ペットが患部を掻きむしったり舐めたりすると症状が悪化してしまうので、それを防ぐために重要です。
ただし痒み止めはあくまでも対症療法となるので、膿皮症そのものを治療することはできません。
膿皮症の予防

ペットの膿皮症を予防するために、まず飼い主さんができることはスキンケアになります。
ペットの皮膚を清潔に保つことができるので、定期的にブラッシングやシャンプーをしてあげると良いでしょう。
しかしスキンケアをしましょうと言っても、いくつかの注意点があります。
ブラッシングやシャンプーなどのお手入れを全くやらないのはもちろん良くありませんが、反対にやりすぎてしまうのも逆効果なのです。
お手入れはペットの皮膚に傷をつけないように優しく行うことを心がけましょう。
そして予防にはスキンケアだけではなく、温度や湿度など環境に気をつけることも大切です。
ペットにとって高温多湿な環境は皮膚に良くないですし、細菌にとっては繁殖するのに絶好な状態となってしまいます。
特に夏場の温度と湿度が上がりやすい時期は、十分に注意しなければいけません。
私たち人間にとって過ごしやすい温度と湿度を保つと、ペットの膿皮症予防になるでしょう。
またペットにお洋服を着せている飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
ですが着せっぱなしにしておくと、ペットの皮膚は蒸れてしまいます。
適度に脱がせるなどして、湿度が上がりすぎないように配慮してあげることも大切です。
精神的なダメージから免疫力が落ちて膿皮症を発症したペットには、治療と並行してメンタルのケアも行いましょう。
飼い主さんがたくさんコミュニケーションを取ってあげたり、アロマやハーブなどを用いて弱ったメンタルを立て直したりすると良いです。
おすすめの膿皮症治療薬

膿皮症は犬と猫で発症のしやすさが全然違いますが、発症してしまった場合に辛いのはどちらも同じです。
強い痒みに耐えられず掻いてしまい、それが傷となって症状が悪化していくのは厄介です。
ペットの皮膚を守るためにリクセン錠600(リレキシペット)と、ピョダームSシャンプー(犬用)を紹介します。
リクセン錠600(リレキシペット)は、犬と猫のどちらにも使用できるお薬です。
セファレキシンを有効成分とするセフェム系抗生物質で、膿皮症などの細菌性皮膚感染症の治療に効果的です。
皮膚の感染症以外にも尿路感染症など様々な細菌感染症に有効です。
経口投与のお薬になっていますが、嗜好性の高いフレーバー錠なので、苦労せず投与することが可能です。
副作用で一過性の嘔吐や食欲不振が見られることがありますので、その場合は速やかに獣医師の診察をお受けください。
ピョダームSシャンプー(犬用)は、膿皮症やマラセチア皮膚炎を改善するための犬用の抗菌薬用シャンプーです。
有効成分のクロルヘキシジンは幅広く抗菌スペクトルを持っていて、多くの真菌や細菌に対して効果を発揮する成分です。
シャンプーの頻度は週に2回が目安になりますが、ペットの症状によって推奨される回数も変わってくるので気をつけてください。
犬と猫の膿皮症について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ペットの皮膚を守ったり、悪化を防いだりするために異常を感じた場合には早めに動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
症状が悪化していた時は治療にかかる期間も長くなりますが、最後までしっかり継続して行うようにしてください。
ペットの身体を清潔に保つためにお手入れも必要不可欠になりますので、定期的なブラッシングやシャンプー、またペットの過ごしやすい環境づくりなどを心がけましょう。